俺にとってヨーロッパ19カ国目になる『ベラルーシ共和国』に、ついにやって来た。
ベラルーシ? 聞いたことがあるような、無いような。
そんな知名度の低いベラルーシの魅力をここでたっぷりと紹介致しましょう。
@まず、海がない! ベラルーシの最高峰は345m! で、これは山って言わない。
Aさらに、チェルノブイリの原子力発電所が爆発した時の放射能汚染物質の約70%は、風向きの関係でベラルーシに降って来た。
Bアメリカに、北朝鮮やイラン、シリアなどと並んでダメダメ国家に名指しされたベラルーシでは、ルカシェンコ大統領が独裁政治を行なっている。
などなど、思わず行ってみたくなる魅力が満載のベラルーシ! みんな、おいでよベラルーシ!
ロシアとベラルーシの国境には、イミグレーションや税関の類いが一切ない。 まぁ、国内移動みたいなもんだ。 でも、出国の時に「お前はいつ入国したんだ?」となるので、ロシア⇔ベラルーシ間を移動した時のチケットを大事に持っておいた方が身のためだ。
モスクワを出て11時間、まだ真っ暗なベラルーシの首都ミンスクに到着。 えらく近代的で大きな駅にビックリ。 4階建てのガラス張りのモダンな駅には、コインロッカーや両替所、カフェなどが入っている。
同じコンパートメントだった皆と別れ、駅に隣接する1泊12ドル(約1,400円)で泊まれる安宿に行く。
『一番安い部屋、プリーズ』
モスクワを出る前に、宿のスタッフにロシア語で書いてもらった紙を意気揚々と見せる。
すると、きっぱりと「ない!」との返事。
・・・うそーん? あるんでしょ、本当は? 壁に貼られていた料金表を剥がして、「じゃぁ、どの部屋が空いてるの?」と身振り手振ると、「ぜ〜んぶ、ない!」との返事。
ガーン・・・ 途方に暮れる俺の姿があまりに痛々しかったのか、おばちゃんはわざわざ外に出てきて『12:00』と書かれた紙を見せながら、「この時間に戻って来い」みたいなことを言っている。
そうか、12時までにチェックアウトだから、その時間にいけばベッドが空いてるわけだな。
駅のロッカーに荷物を預け、12時までの間ミンスクを散策することにした。
まず向かったのは、政府の官庁が入っている『ガバメント・ビル』(写真)。 そして、その前にはレーニン像が!!
うぉぉー、ちょっと感動(涙)。 こんな国がまだ世界に残っていたなんて・・・
『ガバメント・ビル』の周りに警官がウロウロしていたので、一応「写真撮っちゃうぞ」と事前通告。 アフリカなどでは、政府関係の建物や橋・空港などを撮るとものすごーく面倒なことになる場合があるので、聞いておかないとね。
すると、警官は「レーニン、レーニン」と言いながら『撮れ!撮れ!』とジェスチャー。
レーニン像だってことは見れば分かる。
続いて、ミンスクのメイン通りを歩く。
フランチェスカ何ちゃら通りという名前の、この大通りはとにかく幅がやたらと広い! 軍事パレードに最適だな、ここ。
そして、道路の両脇に建ち並ぶ建物もやたらとデカイ! いかにも“計算されて造られた町”といった雰囲気で、ソビエト臭がプンプンする。
ベラルーシは、第2次世界大戦中にナチス・ドイツによって徹底的に破壊された。 だから、古い建物は全くと言って良いほど残っていない。 そして、戦後スターリンによって造り直された町、それがミンスクなのだ。
この通り沿いには、巨大な『KGB本部』がある。 リトアニアでも元KGBの建物に行ったが、規模が全然違う。 デカ過ぎ! そして、その前には1917〜26年までKGB長官を務めたベラルーシ出身のジェルジンスキーの銅像が立っている。 こういう像を倒してないところが、ベラルーシっぽいよなぁー・・・
さらに大通りを進むと、『共和国広場』に出る。
ここにも巨大な建物が並んでおり、その内の一つ『ベラルーシ祖国防衛博物館』に入ってみた。
ここ面白い! ソビエト時代からある博物館なんだけど、多分ソビエト時代から展示してあるものは全く変わっていないと思う。 もう、テーマパーク『ソビエト』って感じ。
とにかく、第2次世界大戦中のナチス・ドイツ対ソ連のことがほとんどなんだけど、館内にはレーニンの他にスターリン像もあるし、共産主義のプロパガンダ的展示方法で、もうそれはそれは凄いよ!
このご時勢に、ここまでレトロなソビエトを見れてしまうベラルーシって・・・
『ベラルーシ祖国防衛博物館』の道路を挟んで向かい側にも、面白そうな建物を見付けた。
入り口に大きな星のマーク(共産っぽい)と、建物の前に戦車が置いてある。
近づいていくと、何やらスーツをビシッと着込んだ屈強な野郎共が沢山ウロウロしていて、ただならぬ雰囲気だったが、そんなことには気付かぬフリをして一眼レフを取り出す。
すると、来た来た! 直ぐに取り囲まれ、ロシア語で何だか言ってる。 「写真を撮るな」と言っているみたいだが、戦車を指差して「戦車撮りた〜い」と駄々をこねると、「そっちの方向だけだぞ」みたいなことを言って許してくれた。
知らなかったのだが、戦車の置いてある建物の直ぐ隣が、巷で評判の独裁者ルカシェンコの大統領官邸らしく、スーツを着た人たちはSPなのだろう。 そういえば、皆が片耳にコードがクルクルってなってるイヤホンをしてたもんな。
しかも、これも少し後になってから知ったのだが、ちょうどルカシェンコが大統領官邸に戻ってくる時だったらしく、道路を全て封鎖して一帯はピリピリモードだったようだ。
そんなことは露と知らず、「さぁ、写真撮ろっと!」と再びカメラを構えていると、別な制服を着た警官が「コラッ、撮るな!」と近づいて来た。
なんでだよー! 「さっき、あのスーツ来たおじちゃんが『OK』って言ってたもん」と抗議すると、SPたちが警官に「撮らせてやれ」みたいなことを言ってくれた。
さらにはSPが「戦車と一緒に写真を撮ってやる」などと言い出し、俺が戦車の前に立って記念撮影させられる羽目に・・・
自分の写真は要らないんだけどね・・・
SPたちに「ありがとう」と言って大通りに戻ると、ちょうどルカシェンコが大統領官邸に戻ってきた時だった。 道路は封鎖され、歩行者も立ち止まると警官に「ゴラッ!」と怒られている。
飛ばし過ぎなんじゃね?と思うくらいスピードを出して、キキーッとタイヤの音を鳴らしながらパトカーと黒塗りの車の集団が先ほど俺が写真を撮っていた建物の方に走りすぎて行った。
ルカシェンコの車を撮ったら、さすがに無事には帰れないだろうなぁー・・・
何だか楽しいのでウロウロしている間に、気が付けば12時半。 宿に行かなければ。
預けてあった荷物を取り、再び宿に向かうと朝とは違うおばさんが座っており、「部屋はない!」。
えー!! まだ12時半だぜ。 ちょっと粘ってみるものの、「ないものはない!」と『ない』と書かれた(多分)ボードを目の前に叩きつけられた。
かなりショック・・・ 安宿のないミンスクで、ここだけが俺の唯一の頼みの綱だったのに。
仕方がないので、ガイドブックに『ミンスクで最安ホテルで、1泊20〜40ドル』と書かれている宿に向かう。
道が分からないので、警官に聞いたり、バスにタダ乗りしたりして何とか辿り着いたその宿も、「一番安い部屋で52ユーロ(約7,800円)」と言われ唖然。
さすがに52ユーロは無理だ・・・ 幾ら迷っても、やっぱり無理だ・・・
もう安宿を探す気力もなくなった。 ベラルーシで野宿は、さすがに難しそうだ。 外国人は滞在登録が必要だから、野宿では登録出来ないし。
しばし呆然として、考え込む。 選択肢は3つあった。
@今からベラルーシ国内のブレストという町に行く。
A今からバルト3国のリトアニアに行く。
B今からウクライナの首都キエフに行く。
ミンスクからブレストまでは列車で6時間ほどだから、今から行ったところでブレストに到着するのは真夜中になる。 真夜中に着いて、かつ安宿を確保出来なかったら相当辛い。
リトアニアに戻れば、行ったことのある所だから安心。 ここから4時間程度の距離だし、逃げ場としては最適。 でも、その後のルートが困る。
ウクライナに抜ければ、今後のルート的には楽。 でも、いまいち安宿の情報が少ないので、ミンスクの二の舞にならないか心配。
1時間以上迷った末、駅に戻る。
電光掲示板を見ると、夜8時50分にミンスクを出て、翌日の9時にウクライナの首都キエフに着く便がある。
これに決めた! ウクライナに抜ける!
チケットも無事に買え、夜の列車でミンスクを出た。
あ〜ぁ、ベラルーシ何泊かしたかったのにな・・・ ネットで調べたら、警官によく職務質問されるとか色々ネガティブな情報しかなかったけど、俺はウロウロしてても1度も職務質問されなかったし、逆に親切だったから良いイメージしかない。 ただ宿だけが、物価に対して異様に高過ぎる・・・
ベラルーシの宿には3種類の料金が設定されている。 @ベラルーシ人、A旧ソ連の国だった人、B外国人。 外国人はベラルーシ人の2.5倍から3倍の料金を払わなければいけない・・・ それが辛い。
『レトロ・ソビエト』ベラルーシが予想以上に面白かったので、また機会があったら来たいと思います。 今度は西部にあるブレストという町にも、ばりばりソビエトチックな博物館があるらしいから、そこに行ってみたいし。
人も皆親切だった。 英語を話す人は皆無だったけど、まぁこれはロシアも一緒だからな。 そういえば、『ベラルーシ祖国防衛博物館』のおばちゃんの1人が上手に英語を話していた! さらに、道を聞いた警官たちに「Be
careful」と英語で言われた!
なんだか世界から取り残されてる感の雰囲気が、たまらなくヒットな国でした。
旅の出費;(ベラルーシ・ルーブル)
トイレ: 280ルーブル
地下鉄: 500ルーブル
入場料: 5,000ルーブル
ロッカー: 1,690ルーブル
外食代: 47,960ルーブル
国際列車代(ミンスク→キエフ): 52,360ルーブル
合計: 107,790ルーブル(約6,060円)
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