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北朝鮮観光

【3日目】U
 ようやく3日目の日記です。

 朝、しんどいままバスに乗せられ、車内でガイドの説明も全く聞いていなかったオレ。
 連れていかれた場所の中に入って、初めてどんな所に連れて来られたのか気付いたのですが、ここがかなり楽しいところでした。
 金日成の銅像は別にして、不覚にも今回の旅で一番テンションが上がってしまった場所です。

 後でガイドブックで調べると・・・そこは、『錦繍山記念宮殿』!!

 館内は一切撮影禁止だったので何とか文章で表現してみます。


 まず、全員2列に整列させられて待機。
 『小学校の時の、全校集会に行くために廊下で並んでる状態』と全く一緒です。 前の人との間隔まで指示され、ちょうど『前ならえ』と同じくらいでしたね。
 しかも、並ばされた場所が渡り廊下みたいで、完全に全校集会に行く時と同じ気持ちになります。
 「校長の話だり〜」みたいな。


 そういえば・・・バスに乗る時から薄々は気付いていたけど、ツアーの皆がやけに小ざっぱりした格好なんですよねぇ。 男性は全員ネクタイを着用しているし、スーツで正装しちゃってる奴までいます。

 あれ?

 オレだけ・・・カジュアル!!

 KY(空気を読める)男であるオレは、さすがに「ちょっとやばい感じだぞ・・・」と気付き、バスの運ちゃんにネクタイだけ借りることに成功。

 ちなみに、そのネクタイの柄は『バッグス・バニー』でした。
 資本主義の人間でさえ、なかなかバッグス・バニー柄のネクタイはしないぞっ!!
 しかもフォーマルな装いが求められている所に、カジュアル+バッグス・バニー柄のネクタイは逆にダメな相乗効果なんじゃねーか?とは思いつつも、空気が少し和んだ気配を読みとって無理矢理納得。


 入口をはいると手荷物を全て預けさせられます。 ポケットの中も全部です。 お金だけは自分で持っていても良いですが、財布はダメで、カメラも当然のごとくダメです。

 続いて、金属探知機を持った人に入念にボディーチェックをされます。

 ここら辺で頭のいい人なら気付きますね。
 あれ?全校集会じゃねーな・・・って。

 整列したまま、動く歩道で移動します。
 動く“歩道”にも関わらず、歩いてはダメなようで立ったまま。
 これがまたビックリするくらいに長く、150mくらいあるのですが、スピードが超おせー!
 ようやく動く歩道が終わり、角を曲がると・・・また動く歩道が!

 えー、距離はやはり150mくらいでしょうか・・・

 「何なんだ、ここの設計! 無駄に長ぇー!」と思っても、口には出さず、そっと心の中にしまっておきましょう。

 動く歩道にウンザリしてきた頃、大理石をふんだんに使ったゴージャスな内装の広々としたところに出ます。
 しかも何やらおごそかな音楽までBGMとして流れている始末。
 ここからは私語一切禁止です。

 整列を2人から3人に変えさせられ、列ごと順番にひとつ目の部屋に入っていきます。
 部屋に入った瞬間・・・


 
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!


 一気にテンションMAXで、オレの激烈な大高潮の炎が燃え上がり、無限大の興奮を爆発させ・・・スイッチがピッ。

 なんと、デカイ真っ白な金日成の像が室内に建っていて、列になったままその像の前で“胸を張る”という行事が行われておりまして・・・久しぶりに「やばいもんを見た!」って感じ。

 しかも!下からは赤の、上からは青のライトを当てちゃったりなんかして・・・

 正直・・・

 言っちゃっていいのかな・・・

 
うさんくさい雰囲気をバンバンに出してるわけです。

 多分、荘厳な感じに演出したいんだろうけど、赤と青のライトが・・・どうしても・・・
趣味が悪いっていうか・・・彼らが目指している(であろう)ものとは逆効果な感じに作用してました。

 「笑っちゃいそう・・・でも笑って許される空気じゃねーな・・・」と、自分を必死に制御。


 なんと、この像の写真がウィキペディアに載ってました!


(wikipedia)

 これ、巨大な部屋の中で見ると迫力が違います。

 今まで色々なものを見てきましたが・・・ここを誰が総合プロデュースしたか知らないけど、感性が尋常じゃないですね。

 もっと大きい写真も見付けました→リンク


 続いて、無言のまま次の部屋に向かいます。
 次の部屋へは、エアーシャワーを通ってから入ります。
 少し灯りを落とした巨大な部屋には・・・

 防腐処理を施された『金日成の遺体』がガラスケースに入って、そこだけスポットライトを浴びています。

 目頭を押さえながらその遺体を一周して、足の方向から、左側から、右側からと、3方向からそれぞれお辞儀をする北朝鮮人たち。
 遺体を凝視して観察してみましたが、蝋人形みたいね。


 まだまだ私語は禁止です。
 続いての部屋では、入口でハンディ型の音声案内器を渡されたので、それを耳に当ててみると・・・


 
ひぃーーーーーーーーーーーーっ!!


 平壌放送の“あの”おばちゃんアナウンサーみたいな・・・
 無駄に力んでる上に、ちょっとわざとらしいほど声を震わせながら、「Our Great Leader President Kim Ilsung...(我々の偉大な金日成主席・・・)」と声が聞こえてきたもんだから、思わず吹き出してしまいそうになりましたが、グッと我慢。
 なんか、めっちゃ上から目線でしゃべってるんだけど、泣きそうな感じで声を震わせてるせいで全然集中出来なくて、詳細が一切耳に入って来なかったんだけど・・・
 ようするに、「我々の偉大な金日成主席が亡くなったことによって、全朝鮮人民がどんなに悲しんだか」というアピールをしているテープでした。
 それを聞きながら、国民が泣き崩れてる図のデカイ彫刻の前で一列に立たされます。
 続いて、「全世界の人々も悲しみに暮れ・・・」というくだりに入ると、そんな感じの別なデカイ彫刻の前に連れて行かれ、再びそこでジーっと。

 全部で彫刻を3つも見せられ、ようやく音声案内器を返却できます。

 最後は、金日成が世界各国から貰ったという勲章が飾られた部屋をまわって、見学は終了。


 まさに、ここは金日成を祀る巨大な“神殿”だな・・・というのが感想。
 ガイドが、「ムスリムにとってメッカが特別な場所なように、北朝鮮国民にとってここは神聖な場所」と言っていたから、まるでメッカのような、エルサレムのような聖地なのでしょう。

 この尋常じゃない感性をビンビンに感じる建物内部と、ガイドの言葉で、自分なりに納得しました。
 ようするに・・・北朝鮮って『宗教』なんだねって。


 日本にいた時の北朝鮮のイメージというのは、『独裁者』がいて、『圧政に苦しむ国民』という非常に単純な構図だったんですけど、『宗教』って捉えた方が理解しやすいし納得しやすいんですよ。

 「実際に自分で北朝鮮に来てみたら、金日成や金正日は国民からホントに愛されて尊敬されているのが分かった」などという感想を持っている人もいるようですが、そんな感想を持つ理由も分からなくもないんです。
 ただ・・・あまりに単純だけど。
 「会った北朝鮮人がみな・・・」という理由なんでしょうけど、旅行で来た外国人が会って話が出来る北朝鮮人なんて限られてるわけです。
 せいぜい一番多く話したのってガイドでしょ?
 オレの場合も、旅行中に一番話しをしたのはガイドだし、次がホテルの売店のお姉さん(「ワタシ、ザイニチデス」って言ってたけど、少し日本語が話せた)で、次が酒を注文する時に接点が多かったバーのお姉さんくらい。
 この中で、ある程度の中身がある会話をしたのってガイドだけですよ。

 一般市民と全く接点がないか?と言えば、そんなことはないのですが、朝鮮語を話せないオレには意思疎通の手段がないわけです。
 後で書きますが、おじいちゃんに話しかけられたことがあったけど、ロシア語でしたw
 こっちはいきなりロシア語でくるとは思ってなかったから、頭をフル回転させてかすかな記憶を辿って、ようやく「Не понимаю русский. Я японец.(ロシア語分かりませ〜ん。 ワタシはニッポン人で〜す。)」と、超カタコトで返事をするのが精いっぱい。
 これで会話は終わりですよ。

 もしオレがロシア語ぺらぺらで、会話が出来たと仮定しても・・・言論の自由がない北朝鮮で、どこの誰かも分からない外国人から唐突に「あなたは金日成を愛していますか?」と質問されて、「いえ、私は愛していません」と答える北朝鮮人がいますかね?
 そう考えると、たかだか旅行で来た程度の外国人が出会う北朝鮮人の100%が“偉大な金日成主席を尊敬して愛している”風なのは当たり前でしょう。
 それをもって「全国民が心の底から尊敬していて愛しているんだ」と結論付けるのは、はっきり言って単純だと思うんですよ。

 あと、移動中のバスから平壌市内を眺めていると、金日成の巨大な画が幾つも街中にあって、その前で市民が献花をしているのが見えました。 場所によっては、列を作って献花する市民たちもいました。
 ガイドが「自主的です」と言ってたけど、自主的か?強制か?なんて当人の心が読めるわけでもなかったら無意味な議論です。
 超日本的で体育会系な会社で、上司から「飲みに行くぞ!」と誘われてついていく部下。 この部下が自主的に行ったか、強制的に連れて行かれたか、を議論をするのと同じ次元ですね。
 自主的だけど強制的、どっちとも取れる。

 これ、『宗教』だったら納得できるんです。
 “百戦百勝の霊将”としてカリスマ化された金日成、彼にまつわる逸話は全て完全無欠な人間像を作り上げ、誰かがプロデュースした『錦繍山記念宮殿』によって意図的に神格化までされている・・・これによって、ただの『独裁者』という単語だけでは表現できない、『神』のような将軍様が誕生するわけです。
 こんな環境の中で生まれ育ったら、心から金日成を「尊敬して愛している」人がいても不思議ではない。
 そんな人たちにとっては、あくまで『自主的』な思考ですよ。
 でも、その思考を形成していく環境は『強制的』ですけどね。

 しかも、これは脱北しない限り、絶対に脱会できない『宗教』みたい。
 ホントは「愛していない」人もいるでしょうけど、脱会できない以上は信奉しているフリを貫き通すしかない。
 そうせざるを得ない雰囲気・・・それが北朝鮮なのかな?ってのがオレの個人的な感想です。


  この『錦繍山記念宮殿』、外観はこんな感じです。


 ちょうど今日が金日成の誕生日ということもあってか、学生たちが宮殿前で軍歌風な音楽に合わせて行進したりしてました。

 全校集会か?


 「休憩!」と言ったのか知りませんが、スピーカーから何かの掛け声が聞こえると、整然と並んでいた学生たちが一斉に「はぁ〜!」というタメ息と共にしゃがみこんでいました。
 ま、ずっと立ってるのはしんどいからね。


 今日は金日成の誕生日ということで、北朝鮮では『太陽節』という国民の祝日になっています。
 そんなわけで、太陽節を祝うために各国から人が集まっていました。
 こちら、中国人民解放軍の退役軍人の団体。
 多分・・・朝鮮戦争で何かしらの功績があった人たちなんじゃないか?と想像します。


 ダメだ・・・また日記が長くなり過ぎた・・・
 『錦繍山記念宮殿』なんて、3日目のまだ朝一発目なのに。

 Vに続く・・・


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